バイク事故

遠くで女達のはしゃぐ声が聞こえた。私は“まだまだ夏休み気分かよ”と思いながら眠りつづけた。
「だいじょうぶか?だいじょうぶか?だいじょうぶか……」と、なんども繰り返す男の声が聞こえた。なんだなんだ?
目が覚めた。立ち上がった。窓の外をみた。(私が事故ったわけじゃないよ)
救急車が来た。しばらくしてパトカーが来た。
丑三つ時をおおかた過ぎた時間帯に起きた事故は、大型バイクの転倒事故で、乗っていた男性に意識がなく弛緩したまま救急車で運ばれていったということしかわからなかった。黒い細長いバイクは、たとえば進行方向を北だとすると、北にタイヤを北西にヘッドライトを向けて、横断歩道の上を斜めに倒れており、男性は北東方向に頭を置き仰向けになって倒れていた。ほかに関係車両は見当たらない。夢うつつに大きな衝突音を聞いた記憶もない。自損か?

警察官が事故の証拠をチョークで引いて、現場検証はいったん終わった様子だった。
バイクは怖いよ。「だいじょうぶなんかねえ」とヤスコに言ったら「現場に花束がなければね」と皮肉っぽく返してた。