三原順さんとか

なんとかというミステリ作家が三原順さんという漫画家の描いた作品『はみだしっ子(タイトルだけ読むとエロマンガっぽいが、実際はダウナー系の少女漫画らしい)』の中に出てくるフレーズやセリフを盗作したとして、問題の小説が回収および絶版になった事件を、11月はずっと追ってネット内を読み歩いていました。
検証サイト⇒ http://www.geocities.jp/flutter_of_earthbound_bird/

小説家の弁明する「素材カードに該当部分が紛れ込んでしまった」結果の今回の騒動、素材カード、というところにひっかかった。
実際この小説家は素材カードというのを持ってるんだろうな。それも膨大な数の。素材というのはセリフ集なのかシチュエイション集なのか、それともトリック集なのか(推理小説家だそうなので)、それともそのすべてをコレクションしてるのか。というか、自分で思いついた素材なのか(寝てて夢で見て、あわてて起きて枕元のメモ帳に書き写すような)、誰かほかの作家の描(書)いた作品を読んで、気に入ったフレーズを書き写したコレクションなのか。ほかの作家の作品を素材として使ってるのなら、作家としてのプライドを疑う。普通の一般人レベルの私でさえ、こんなブログで書き綴る世間の事件の所感ですら、ほかのブログとベクトルは一緒でもせめて表現は丸かぶりしないように自分で一度事件のあらましを飲み込んで濾過して出てきた文章を書こうと思うのに、この小説家は、ほかの作家の創作物を素材だと思って使ってるのなら。
ま、三原順さんのほかにも素材化された作家はたくさん居るのだろうな、と想像に難くないよ。

というか、自分以外の作家の作品のなかのセリフを抜き書きして素材として扱うこの小説家の神経が一番不可解だ。なんで「素材」なの?「紛れ込む」というのもおかしい。好きな作家の文体を真似したくて1作品まるまる書き写す、ということは習作としてはあると思う(私は司馬遼太郎の文体にあこがれて、燃えよ剣を書き写そうとしてノート1ページで挫折したクチ)。好きな作家の書いたフレーズがとてもツボに来て、日記やなにかに書き写す、という行動なら理解できる。でも素材カードでしょ?“まぎれこむ”くらいなのだから、カードの形式もほかの素材カードと同じ形なのでしょ?ありえない。はなっから自分の小説に組み込んでやれともくろんでいたとしか思えない。推理小説なのだからトリックが本丸なのかもしれんが、外郭だって作品のうちだ。それともあれか、今度のマドンナの新曲みたいにアバの曲の上に違うメロディを乗っけてそのメロディラインで歌うというノリか?だったら最初から『三原順リスペクトです』って巻末にでも書いとけボケ!

佐々木倫子は図鑑やなにかを見て描いた魚etcをコマ内に載せる程度でも参照元をページ内に書いてるぞ。そういう基本的なことがなぜ出来ないのだろう?
今回の回収絶版騒動でとある弁護士が「平成の表現狩り」と評したのも謎。パクり作家が糾弾されるのが表現狩りなら、パクられ作家の心情は表現狩りどころの騒ぎじゃないだろうて(三原順さんは亡くなられているから感じようもないが)。自分の出した作品を素材として扱われて(自分レシピで作ったカレーの、肉や芋やにんじんだけすくって持ってかれて、なんか知らん味噌汁の中に入れて売ってる盗人店のような作業だ<素材)平気で居られる作家がどれだけいるんだろう?殺人を犯したすべての人間を死刑にするのは違法、みたいなことをほざいてる弁護士だなと思ったよ。